歩み

旅と喫茶と、時々、エイト

はじめての しゅっちょう

2022 11/16(Wed)

荷造りをサボり深夜1時までスーツケースと格闘してから、朝5時に起きた。冴えない頭で顔面工事(=化粧)を施し、珍しくスーツを着て、GUで買った1500円くらいのぺたんこパンプスを履く。朝6時に家を出てかさばるプラごみをぶん投げ、始発の地下鉄に乗って空港へ向かった。

 

仄暗い明け方の空に白い息が映える。11月の北海道は冬の東京より寒い。

そう、不覚にも #春から社会人 になってしまった道産子は、社会人らしく✨東京出張✨を言い渡されたのだ。

 

本来新入社員は出張NGらしいのだが、懐が広い管理職の方々は快くGOサインを出してくれた。両親と友達がめちゃくちゃ喜んでくれた。一カ月前から準備が始まり、教育担当を筆頭に一から十までHow Toを教えてくれた。ありがたい。本当にありがたい。

 

出張前日は若手研修だった。文字通り「研修」で終わってくれればよかったのに、「研修」という名目で定時過ぎから懇親会があった。5時起きだもんで酒を一滴も飲まないぞと心に誓ったものの、一杯目からビールをいっぱい飲み一敗目を喫した。続けざまに別の酒を飲み惨敗に終わった。

課長から「出張のことは同期に言いふらさないでね~」とやんわり口止めされていたので、懇親会で初めて話した。隠し玉の隠し具合に全員が耳を疑い、人事から「早く帰りなさい」と言われた。おっしゃる通りです。

出張仕様のジェルネイルが煌めくかじかんだ手を温めながら、空港に辿り着いた。先輩と合流して朝8時発の飛行機に乗り込み、機内サービスのホタテスープをもらった瞬間爆睡した。運悪く隣の座席を引いてしまった推定30代のガタイがよろしいサラリーマンに迷惑をかけていないことを願う。

 

気づけば羽田空港に到着。

目の焦点が定まらないままコンベアを見つめ、幾度となく乱暴に運ばれてきた傷だらけのスーツケースとのご対面を待ち、京急に飛び乗り、果てしなく長い東京の駅構内を駆けずり回って、オシャレなホテルに似合わず汗だくで荷物を預けた。散々連れ回された挙句、邪魔者扱い。

私がスーツケースなら保安検査場を通った時点で泣いている。

 

昼食を済ませ、前乗りしていた先輩と合流。すでに900字近く書き連ねているが、ここからが本番だ。今のところ余計なことしか書いていない。

 

ざっくり言うと、私の役目は「見ず知らずの先輩社会人数百名に丸二日立ちっぱなしで自社商品の魅力を広める」こと。

多少の脚色は認めるが、あながち間違いではない。

 

何よりしんどいのが、聞いたことはあるけど理解していない専門用語がポンポン飛び交うこと。

 

例1

社員A『この商品、道外でも提案できる?』

ワイ「はい、アンテナショップや物産展の北海道フェアでも販売実績ありますよ!」

社員A『あのーそういうことじゃなくて...』

先輩「スポット限定なので、事前に導入期間とケース数をお伺いします!この商品は1ケース単位で納品できますよ!」

社員A『なるほどね!わかりました』

 

ん???私なんか間違ったこと言った?

 

例2

社員B『この商品、ロットどんぐらいなの?』

(さっき先輩が1ケース単位でも納品できるって言ってたはず...!)

ワイ「え~と1ケースからですね」

社員B『あー販売ロットはそうだよね、製造ロットは?』

 

し、知らね~~~www

 

 

あからさまにドギマギしていると、Mr.インクレディブル並みのスピードで先輩が助け舟を出してくださり、その後の会話を何度もバトンタッチさせてしまった。

 

不甲斐なかった。

 

出発前は「はじめての しゅっちょうだ!!!」とウキウキしていたのに、思った以上に役に立たなかった。

先輩たちは「いや~初めての出張でこんなに話せてたら十分だよ!」と励ましてくれたけど、自分で自分に期待しすぎたことを悟って、歯痒かった。日頃関わっている商品は一番の得意分野だろうに、大人たちと会話のラリーが続かないことが悔しかった。

そりゃ培ってきた経験と年数は劣るにしても、先輩たちと何が違うんだろう。あらゆる手筈を整えて研修配属中の私を出張メンバーに選んでくれたはずなのに、当の本人は不安の渦中にいる。

 

ホテルの大浴場を楽しみにしていたけど、気乗りしなくて部屋のシャワーで済ませた。あれこれ考え込んで、電気を点けたまま寝落ちしていた。

 

脱線しすぎて後編に続く→