歩み

旅と喫茶と、時々、エイト

駆け込み万博で、終わりゆく夏に世界を旅する

9月18日(木)
・朝8時すぎの飛行機で神戸空港に降り立つ。想像の5倍小規模な空港だった。神戸プリンしかなかった(語弊)。この日のNGK公演は中川家が出演する当たり回だったが、神戸に着いた時点で当日券が売り切れてしまった。
・ホテルに荷物を預けたあと、思い立って阪神電車千鳥橋駅へ。SUPER EIGHT横山裕さん行きつけの老舗お好み焼き店「あたりや」をようやく訪問できた。

横山さんが食べて育った素朴な味
昼間しか空いておらず、ライブ期間中はオタクでごった返すため数少ないチャンスだった。同志が持ち寄ったグッズで祭壇ができている。此花区は横山さんの地元。しばらくあてもなく散歩した。通学路や商店街を見つけるたびに、幼い横山さんが駆け抜けていくように感じた。

・大好きな御堂筋線に揺られて純喫茶へ。『純喫茶とあまいもの 大阪編』を読んで、絶対に訪れようと決めていたコーネル。チーズケーキの上で季節のフルーツ、いちじくが踊っていた。
・好きなビアバーは定休日。ホテル内のハワイアンレストランで晩酌した。ガーリックシュリンプとポキを食べてシャワーを浴び、気を失うように10時間寝た。
ANAのスマートU25は搭乗当日まで空席があれば、25歳以下ならLCC並みの値段でチケットが手に入る神システム。口コミを信じて深夜3時まで伊丹・関空の空席開放を狙ったが徒労に終わり、今にも倒れそうな眠気と戦い続けた一日だった。大学時代、帰省で散々お世話になったスマートU25もラストイヤーだ。年内にもう一度使いたい。

9月19日(金)
・6時台に気持ちよく目覚め、8時台に夢洲着。 

話題の阿部寛は見切れてますな
大阪メトロ中央線はコスモスクエア駅を出た瞬間「次は、いよいよ夢洲駅です!!」と大げさなくらい劇場型のアナウンスに、コブクロの万博テーマソングが流れる特別仕様だった。隣で立ってた家族連れのうち、中年のお父さんだけめちゃくちゃはしゃいでいて奥さんと子どもにたしなめられていた。童心に帰る場所、こんにちは万博___
・小一時間待って空港と同じガチガチの手荷物検査を受け、10:10にめでたく万博入場!大屋根リングは散々な言われようだったけど、虫一匹止まってませんでしたよ。
・最初に辿り着いたのはコモンズC館。ウクライナ館、いろいろ考えさせられる。
・個人的に惹かれているマルタ。30分程度で入れた。親日国らしく、友好の証として互いに贈呈した鎧と甲冑が入口に展示されていた。死ぬまでに観光したい。マルタに限った話ではないが、食事はアミューズメント価格すぎて味がしなかった。
マルタのCisk Lager(1400円)とラビオリ(2200円)
・続いてコモンズA館。イエメンの宝石やトリニダード・トバゴのカーニバル衣装などを眺めていると、ブルンジの陽気な青年が「みんなみんな〜、まいどおおきに〜!ブルンジコーヒー、むっちゃうま〜い!しらんけど〜」と客引きしていて、みんな笑顔になった。半年間言い続けているのか関西弁が板についている。「むっちゃうま〜い!」の発音は𝑴𝒖𝒄𝒄𝒉𝒂𝒖𝒎𝒂𝒊でした。
スリナムの装身具
・その足で「夜の地球」パビリオンへ。石川県の復興を象徴するような、輪島塗の地球を眺めることができる。通りすがりの人が呟いていたが、不自然な継ぎ目や色ムラが一切ない。日本の伝統工芸の真髄を見た。
・小腹が空いて、ドイツビール(1800円)を飲みながらたこ焼き(6個で1100円)を食べた。資本主義の味がした。
・夕方すぎ、スペイン館がバグりぬるっと15分で入れた。青が基調のテクノロジーコーナー、オレンジが基調のパッショネイトコーナー、白が基調の売店を順に歩き、色彩の隔たりが大きすぎて太陽光を直視した後の丸い光みたいなあれがずっと見えた。一瓶2万円の粒状オリーブオイルを売っていた。夜に通りがかったときは屋外でフラメンコショーをやっていた。

・次回の万博開催国であるサウジアラビア館は外観からアラブの風を漂わせ、気合が入っている。行けるもんなら行きたかったが行けなかった。

異世界
・どこのパビリオンも入れそうになく、一時間並んでガンダム像そばの土産物店へ。
アトムを探せ
相棒の太ったミャクミャクをお迎えした。ミャクミャクさんたちがひしめき合っていると、”生命の蠢き”を感じる。

・すっかり日も暮れ、夜の大屋根リングに登った。正直、ここからの景色は万博でいちばん感動した。これだけでも万博に来た価値があった。各国個性ある光を放ちながら、リングの中で確かに世界は一つだった。
地球に土星の環がついて、大きな地球儀を旅しているようだった。この麗しき世界に紛争や自然災害が絶えないこと、悠久の自然の前では無力にもかかわらず、利己的な人間のことを思った。悲しいくらい美しい眺めだった。人間が生み出した、残酷な光だった。

・大屋根リングの下でひときわ光り輝くトルクメニスタン館を見つけ、30分ほど並んで入館した。

えぐい
一部メディアでは北朝鮮より情報が少ない国」とも言われる、謎に包まれた国だ。是非とも訪れたかった。総統の肖像画を掲げた入口を抜けると、アジアとアラビアとヨーロッパの文化が融合したような意匠がそこかしこに広がる。トルクメニスタンの薬用植物、鉱物、農産物、繊維工業、生活用品、さらには日本語教育用の教科書まで、思いの外たくさんの資料が展示されていた。すっっっっっっごい面白かった。Tシャツ買っちゃった。
・開場時間は22時までだが、混雑緩和のため21時までにはほぼすべてのパビリオンが閉まる。慌ててコモンズF館に立ち寄りこの日は終了。と言いたいとこだが...
ドローンショーをやっていた!
・万博会場から外に出るまで30分、夢洲駅に辿り着くまで30分、ホテルに着くまで30分。18km歩き、かかとが外れそうだった。ビアバーに行く体力もなく、カップ麺を食べてシャワーを浴び、TVerで前話を振り返り、『40までにしたい10のこと』最終回の12話を拝む、ドラマにはならない幸せな日常_____

(読み飛ばしていいです)
・あのね、私はカプセルホテルを予約したんですよ。テレビはあるけど音が筒抜けにならないようイヤホンで聞くスタイルなんですよ。どういうことかわかります?個室のホテルと違ってバカ騒ぎできないんです。いや個室でもダメか。もうね、中国の皇帝が「憤死」する理由がわかった。ハンカチを噛みながら怒る女の心理がわかった。感情がピークになる場面で抑圧されたとき、人は予想だにしない行動を取りますね。土曜は9時に万博入場だってのに、深夜3時までTVer観て枕叩いてヘドバンしてました。もうちょっと部屋が広かったら飛び込み前転とかしてた。危ねえ危ねえ。苦情来なくてよかった。全然寝れませんでした。雀さんと慶司が、今日も幸せに過ごせていますように_____どうか、どうかこの大切な日々が 気まぐれじゃありませんように(本歌取り)_____

ありがとう。本当に、ありがとう________
(読み飛ばし推奨終了)


9月20日(土)
・3時間睡眠で挑んだイタリア館との死闘はこちらをご覧ください。
【検証】大混雑の万博イタリア館に並びながら村上春樹を何ページ読めるのか - 歩み
・イタリア館で燃え尽きたあとは、バルト館とチリ館へ。アルトゥルさんには会えなかったが、形見のミャクミャクとバルトの薬草を拝んできた。
・チリ国内はちょうどワインウィークらしく、チリパビリオン内部でワイン講習を行っていたが事前申込制だった。近くでカビゴンが寝ていた。

ポケモンスリープ(実写版)
セネガル館とバングラデシュ館を眺めたあと、流れるようにコモンズB館へ。
ベナンへよこそ!
DJポリスみたいな警備員が面白かった。「え〜コモンズB館は予約なしで26カ国巡り放題、もはや世界旅行。館内の温度は約15℃。暑い外には戻れなくなっちゃうかもしれませんね〜(意訳)」など滔々と語り、惜しげもない𝒪𝒮𝒜𝒦𝒜 𝒮𝓅𝒾𝓇𝒾𝓉𝓈を感じる。
特にカリブ海沿岸の島々、衣服のデザインがかわいい
アフリカや中南米オセアニア諸国で技術革新が進むさまを新鮮に眺めるたび、人を傷つけるのは無意識の偏見だとわかる。
たこの輸出で有名なモーリタニア
Twitterで有名なナウル
・コモンズを出ると、タイミングよく花火大会をやっていた。「万博公式」みたいな映像が撮れた。
夏の幻影?
・飢餓状態の私を救うように、たまたま入ったベトナム館で軽食にありついた。ベトナムのミルクコーヒーは練乳が入っている。フォーと迷ったが、ミルクコーヒーとの相性を考えてバインミーを選んだ。
・外のベンチで同じ組み合わせを楽しむお姉さんがいて、一緒に食べた。黒髪パーマのショートカットヘアに、白い綿のチュニックを着た、どこかエスニックで自分の世界を持っていそうな人だった。左手薬指が光っていた。お姉さんは万博に興味がなかったらしいけど、電車一本で来場できるところに住んでいて、7月にもふらっと訪れたらしい。前回はあえてパビリオンを回らず、コロンビアとブラジルのコーヒーを飲み比べて颯爽と帰ったとのこと。かっけえ。血眼で安い飛行機をもぎ取り、できる限り元を取ろうとイタリア5時間耐久チャレンジに挑んだ私とは住む世界が違う。穏やかな関西弁で相槌を打ちながら、私なりの「大阪・限界万博」を楽しそうに、物珍しそうに聞いてくれた。空きっ腹にぶち込む練乳入りミルクコーヒーで血糖値が爆上がりし、いよいよ天に召されるかと思った。

・私にはまだやり残したことがある。コモンズA〜F館(E館は毛色が違うので除外)を制覇できていない!

落合陽一プレゼンツ
お姉さんに別れを告げて雑踏を駆け抜け、null館を通り過ぎ、大屋根リング半周分引き返してコモンズD館へ。
ビジュアル優勝のオーストリア
閉館まで残り30分!
マーシャル諸島第一次世界大戦第二次世界大戦終戦まで日本の統治下にあり、「アミモノ」などいくつかの日本語が現地の単語として定着しているそうだ。全然知らなかった。マリの民族楽器に耳を傾け、モンゴルに伝承する文字を学び、カラフルなタジキスタンの紋様にトルクメニスタンと通ずる文化を見出し、しばらく渡航できそうもないパレスチナ館に息を呑んだ。

コモンズB館の警備員が呟いたセリフがフラッシュバックする。”もはや世界旅行”_____そうだ。

私は今、世界を旅している!
世界各国の風土、歴史、混沌、血、涙、決意、夢が押し寄せる。各国の文化が、大阪で廻り合う。生命の息吹を、鼓動を感じる。

”いのち輝く未来社会”に、生命と文化が脈々と受け継がれる。そうか、ミャクミャクはここから生まれたんだ。やっと出会えた。万博を諦めないで本当によかった。私はこの夏、コモンズを制覇し、世界の広さを知った。
・上半身と下半身が分裂しそうだった。2日で30km歩いてこの有様。24時間で105kmを走り7億円を集めた横山裕(44歳)の偉大さを知る。クウェート館、サウジアラビア館、アメリカ館に行けなかったのは悔しいが、人が多すぎて行列を締め切っていたので仕方がない。本当に、本当に、帰りとうなかった___

そんなこと言わないで

9月21日(日)
阪堺電軌に乗って、観光ではまず訪れない北天下茶屋駅に隣接したコーヒールンバでモーニングを食べた。

これぞ西成区と言わんばかりの新今宮駅前ホーム。歯のないおっちゃんが外国人にたかってた
10種類あるモーニングから、三色トーストを選んだ。絵にかいたような大阪のおばちゃんの常連客でにぎわっていた。
・10月末に日本から撤退するローラメルシエでハイライトを買った。大阪の百貨店店員なんて全員ハイエナだと思ってたけど、たまたま物腰柔らかな方が担当で助かった。ロレアルパリといい、Too Facedといい、素敵なハイライトはどうして日本から消えてしまうのか。けっこう気に入ってるんだけど、もう一個ストックした方がいいのかね?
・もう一軒純喫茶に行けるくらいの時間はあったが疲れが溜まっており、足早に空港へ。スマートU25で伊丹発を勝ち取った。毎回551で豚まん2個と海鮮ちまきをテイクアウトしないとダメな体になってしまった。
・線状降水帯でフライトが危ぶまれていたなか〜、しっかり定刻通りに(むしろ巻きで)到着してしまいました〜。チックショー!!!大阪に住みたい!!!!!今年だけで3回行ってるけど全然飽きない!労働が、嫌いです!!!

村上春樹さん、対戦ありがとうございました。イタリアと合わせて18000字書いて連休と万博が閉幕しましたよ。

ミャクミャクネイル、気づいた?